2010-08-05から1日間の記事一覧
Aは日常的に爆弾を抱えている。 俺の隣で煙草をふかすその左腕には、二の腕まで伸びる無数の傷跡。 「それ、すげえ目立つ」 顎で指した俺の言動に一瞬目を丸くしたAはしかしすぐに煙を吐き出し口を歪ませた。 「夏だからな」 「お前、カッターは右で持つわけ…
Aは言う。老いていく人生なんてまっぴらごめんだ俺は老いを自覚する前に自分から死んでやる。 そんなくだらないことを俺は隣で聞き流しながら既に二十歳を過ぎたAを一瞥。開口。はしない。 Aには俺の言葉は届かない。若さが幸福を求めるうちは、人間は成長し…
ずっと気になってることがあるんだよ実は俺さ 右回りと左回りの違いが良くわからないんだよねいや 時計回りと半時計回りって言えばそりゃあ、毎日のように 時計は眺めているから時計回りがどっちに回っているかぐらいは 俺の弱い頭でも理解しているつもりだ…
現代に於いて自殺というものは一種の表現手段である。 ここで少年Aが首を括って死んでいるのを少年Bが発見したとすると少年Bの思考には一定期間少年Aの事柄のみが存在し少年C~少年Zは倫理的に少年Aの葬式で笑うことは許されない例えどんなに少年Aが…
弱虫で泣き虫で根性無しで 痩せ細ってネジが外れ低身長 その上先端恐怖症で妄想癖を持つ 精神年齢が実年齢の1/10にも満たない そんなお前は俺のヒーロー。
踏切を見ると決まって頭痛と吐き気、晩には不眠症を催す。 はて、こんな体質になったのはいつからだったか縮んだ脳みそで遡る午前三時。 俺は三度目の射精。三回分の精子で汚れた腹には酷く焼け爛れた桃色のケロイド。 あれ、俺はいつから腹にこんなものを飼…
綺麗な空が見えた。 そんな空の下にいる俺は抜群に映えた。 広い空を俺で汚したくて、頬を伝った感情を繋げたかった。 どんなに空を仰いでも、空はそっと俺を見ているだけで、また感情が頬を伝った。 汚れた感情はそっと地面に染み込んで、すぐにまた俺を覗…
お元気ですか。 私は相変わらず、元気にやっています。あの時と変わったことといえば、少し、おとなしくなったくらいかな。 あなたがまだ近くにいた時は、私はホントにおてんばで、男の子のように飛び回っていたもんね。懐かしいな。 お世辞にもたくましいと…
哀しいから喋らないでよ。そんな言葉を並べたって私とあなたの間には深い深い溝があるの。 苦しいから触らないでよ。どんなに強く抱いたって私とあなたの間には薄い薄い皮膚があるの。 痛いからいれないでよ。何度私を突いたってあなたと私の間には成分の違…
遺書 母へ 今まで女手一つでここまで育ててくれて、本当に感謝しています。 家族の愛に育まれ、僕は大変幸せに、健康に成長することが出来ました。 今この瞬間でも、僕の心は幸せで溢れています。 何故死を決意したのか、あなたは僕に問うでしょうね。しかし…
土砂降りの日お前と目が合うと俺はへんに明るくなる。 今日だって外は昼間だってのにこんなに暗い。お前の肌もぺたぺた俺の手に張り付いて、睫毛が触れるほど近いのにお前は目を合わせてくれないから少し苛めてみたくなって真っ赤な頬にキスをする。 やっと…
「どうして戦争が起こるの?」 「平和を求めるからよ」 「どうして差別することはいけないことなの?」 「皆差別する人が大嫌いだからよ」 「感情で動く人間は何故疎まれるの?」 「人の感情は無視するからよ」 「宗教を信じている人同士でどうして戦争をす…
わたしは六階に住んでいる。 脳が覚醒している間は食事排泄身体清掃以外はベランダでの生活。 これはわたしが望んだことだ。街が花みどり色をしているから。 毎日のように赤はくるくる、サイレンはぐるぐる唸っている。 どこかの誰かが他人と関係するから。 …
冬は怖い。凍てつく言葉は白く形になるから。 誰の口からも発せられる、すぐに消えてしまうふわふわの言葉がぼくにはとても鋭いナイフのように感じられるんだ。北半球の全ての人間が、冬には凶器を持ち歩いているからぼくは春まで外には出ない。 クリスマス…
ぼくはばかでした。 カップ焼きそばなのに、湯切りをする前にソースを入れてしまうなんて。彼女を殺してしまったときよりも大きな衝撃を受けています。 そういえば久しぶりに彼女のことを思い出しました。半年前に二人で引っ越してきたその日彼女と口論にな…
ぼくにはしに神が見えます。 まいにちだれかのとなりでにやにやわらっています。 しに神はたいていがおんなの人です。 かのじょたちは ぼくが見つめていてもきづくことはありません。 目をつけた人間のもとへ行って キスをします。 そのキスはとても・・・見て…
通りゃんせを口ずさみながら横断歩道の岸を渡っていると隣から1音階高い通りゃんせが僕の鼻唄に乗っかってきた。 振り向いても鼻唄の主は見つからない。目線を下げた時、僕の足元に大きな瞳を見つけた。小さな彼女は無邪気な顔で僕に手を伸ばす。僕はそれに…
小さな白熱灯の下キャンドルを灯した部屋の隅で叩くキーボード。 かたかたと鳴る音階のない鍵盤から紡ぎ出す言葉の音譜。 オンラインだなんて妄想に安住した結果の僕。 画面の中で連なる言葉はどれひとつ僕に話しかけてるわけじゃないってそんなこともわかっ…
彼とは横浜で別れた。 好きでもなかった人だった。別れの言葉を口にした時彼は泣いていて、ああこういう所が好きじゃなかったんだなと最後に気付いた。 横浜には喜怒哀楽が飽和していて、もはや誰もそんなものを求めていないから私たちのやり取りに眼を向け…
戦争少女はピースボーイに左腕を突きつけました。戦争少女の身体は既に兵器化していて、右足は斧、腹には爆弾、眼窩には手榴弾、そして地雷に吹き飛ばされ た左腕は突撃銃にとってかわっているのです。銃口をこめかみに突き付けられたピースボーイはしかしそ…
ぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼりぼり 氷ばかり食べているから氷子と名づけた。もちろんこおりこと呼んでいる。 仕事で文章を綴っている。BGMは氷の砕ける音。 PC画面には未だ真っ白なワード。蕩けきった脳の俺は情報を情報のままアウ…
唐突に首を吊ろうと思ったのは、傍線部④がどこにも見当たらなかったからだ。 有るべき所に有るべき物が無かったからその瞬間何もかもが面倒になって「そうだ死のう。」 以前も使用したロープを片手に学校の屋上へ到達。こんな俺が生徒会長なんだってんだから…