笑顔の未来

戦争少女はピースボーイに左腕を突きつけました。戦争少女の身体は既に兵器化していて、右足は斧、腹には爆弾、眼窩には手榴弾、そして地雷に吹き飛ばされ た左腕は突撃銃にとってかわっているのです。銃口をこめかみに突き付けられたピースボーイはしかしそれでも笑むことを止めません。戦争少女は不愉快でし た。笑顔なんてものを、初めてみたのですから。引き上げられた表情筋はただただ気味の悪い造形にしか写りません。戦争少女は引き金を引きました。ピース ボーイの頭は散りました。いつも見てきた風景です。いつも創ってきた色が眼前に広がって、彼女の心は安堵に満ちました。そのとき生きている人間がそこにい たなら、見ることができたでしょう。ピースボーイとまったく同じ戦争少女の微笑みを。