いつかあなたにも

通りゃんせを口ずさみながら横断歩道の岸を渡っていると隣から1音階高い通りゃんせが僕の鼻唄に乗っかってきた。

振り向いても鼻唄の主は見つからない。目線を下げた時、僕の足元に大きな瞳を見つけた。小さな彼女は無邪気な顔で僕に手を伸ばす。僕はそれに答えようとコートのポケットから手を抜く。指先が触れたとき目の端で青い光が点滅する。僕の意識は岸の向こうに向いた。

歌が止み赤いライトが主張した。目線を戻してももう彼女はいない。見えるのは眼前いっぱいのトラックの顔と鈍いクラクションの痺れる感覚。