六階の少女

わたしは六階に住んでいる。
脳が覚醒している間は食事排泄身体清掃以外はベランダでの生活。
これはわたしが望んだことだ。街が花みどり色をしているから。

毎日のように赤はくるくる、サイレンはぐるぐる唸っている。
どこかの誰かが他人と関係するから。
誰かと繋がったときに人の生死は決定するらしい、わたしが覗いている限りでは。

深夜2.5時でわたしの脳は72時間覚醒していることになる。
意識が途切れるまで眠らないんだ、だって勿体無いでしょう?
夏は嫌いだ。陽の昇りが早いから。夜はこんなにもきれいなのに。

どこかで鳴ったサイレンを追っているとき水滴が頬を伝った。
発生源を辿った先には黒い雲。一瞬の稲光の後のごろごろごろ。
久しぶりに空を仰いだ。そういえばもうずっと、青い空を意識していない。

絶交した男子の輪郭を既に鮮明に思い描くことはできない。
もう、曖昧に惚れたりしないんだ。ジャックされると殺されてしまうよ。
陽は落ちていく。夕日に照らされたわたしの頬はへんに赤く染まる。

きょうも
白黒まみれのコンクリート
ベランダの向こうに笑いながらいっぱい。