二百人記念

[09081922625]

着信履歴に並ぶ数列はそれ以上の意味を持たない。月の影でさえ私を照らすことはしないのだ。夜に嫌われた私は吐瀉物にまみれた高架下でじっと息を潜めている。

エレクトロな着信音が私を叱る。兎のように耳を逸らして豚のように怠惰を貪る。身体中に点在する痣は牛みたいだなって笑ったら自分が何者なのかわからなくなった。神が動物を創造した際余った半端物を継ぎ合わせて作ったのが獏という妖怪だという。そんな話を思い出して、私に翼が生えることはないのだと思った。神は鳥から翼をもぎ取ることはしないだろうね。人間になりたいだなんて願望は既にない。


[人間は、どん底まで落ちると、他人を傷つけることにしか興味がなくなるものです。]


誰が言っていたのかは忘れてしまった。ただこの言葉だけは印字されている茶色けた紙と共に瞼の裏に焼き付いて私を焦がし続ける。彼は可哀想な人だわ。頬の傷が沁みた。大根をおろすように頬を網戸になすり付けられたときの傷。もうずっと鏡を覗いてはいない。傷に触れた左腕には広くケロイドが走っている。いつの傷だかは忘れてしまった。
頭上を跨ぐ電車が私の呼吸音を遮る。高架下は赤錆の臭いで満たされている。電車が過ぎ去ったあとの静寂の中で横隔膜の痙攣する声と安定しない足音を聞いた。革靴の濡れた音は歪んだガードレールに弾けてぐしゃりとその場に崩れ落ちる。ぎゅ、だとかぎゃ、だとかいう間抜けな声を立てて若い会社員は動かなくなった。彼を浸食する冷たさで雨が降っている事に気付いて、あ、被曝してる。暢気にそう思って、笑った。自分の笑い声が反響する。そういえば久しぶりに聞く自分の笑い声、彼に歩み寄り触れる私の指先は桃色に染まって世界を拡張していく。ひやりと冷たい彼の背中に触れて震える細い肩から覗く瞼が開いたとき、その眼の強さに惹かれたのだろう。熊や虎のように噛み付かれるその眼に満ちる睡魔は妙に扇情的でとろけてしまいそうだったから、

「海がみたい」

彼は座らない首でそう呟き襟に身体を預けて再び眼を閉じた。投身自殺するように打ち付ける雨は私の乾いた血液を溶かして芳しい鉄の薫りを振り撒いている。何百何千と死んでいく雨の中私はその中に海を創った。断続的に途切れる電車の窓から差す無機質な光が、私の両眼から流れ落ちる海を照らしていた。


フォロワー二百人記念ということでフォロワーさんの名前やそれにまつわる語句を用いて文章をこしらえました。どうしてもいれられなかった方ごめんなさい。これからもどうぞよろしくお願いします。以下使用させて頂いたフォロワーのみなさまです。登場順敬称略。

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えっえっ自分どこって方は聞いてね。